GoogleやYahooなどの検索エンジンで、検索キーワードに応じて検索結果上に表示される広告はリスティング広告(検索連動型広告、検索広告)と呼ばれています。
海外に向けてリスティング広告を運用する際は、広告を出稿したいキーワードの選定に加えて、「そのキーワードがターゲット国で検索された際に、実際にどのような広告が表示されているか」を確認することが重要です。
既にそのキーワードで出稿している企業はその国での競合の可能性が高く、広告文にはまさに競合がアピールしたい強みやその国のユーザーに刺さる文章の要素が詰まっています。競合のリスティング広告の広告文を分析することは、国ごとの特徴に応じたクリック率・コンバージョン率の高い広告文を作成するために役に立ちます。
しかし、リスティング広告は基本的に地域や言語でターゲットを絞り表示する広告であるため、出稿したいキーワードが決まっていても、日本でそのキーワードで検索しても、海外で表示されている広告を見ることはできません。
現地まで足を運び、出稿したいキーワードをGoogleで検索し、表示された広告をメモするのは旅費や手間を考えると難しい場合が多く、例え海外に拠点があったとしても、どういうキーワードで検索して欲しいのかを指示出しするのに手間が掛かり、柔軟性に欠けます。
そこで、日本にいながら海外のリスティング広告を表示させるためには、通常のGoogle検索以外のアプローチで取り組む必要があります。
本記事では海外に向けたリスティング広告の運用のポイントとして、サンプル事例を用いて広告文の分析の仕方を紹介し、日本にいながらどのようにして海外の競合の広告を確認・分析する方法をご紹介します。
目次
リスティング広告における広告文分析のポイント
リスティング広告において競合の広告文を分析することは海外向けに出稿する場合だけでなく、日本国内におけるリスティング広告の運用でも重要なポイントです。
海外のリスティング広告の広告文を確認する方法をご紹介する前に、まずはどのような目線で競合の広告を分析すると実務に活かせるか、国内のサンプル事例を活用してご紹介します。
国内でターゲットキーワードの広告文を表示・分析
日本で特定のキーワードの広告文を確認する方は簡単です。Googleでそのキーワードを検索すれば、様々な企業の広告文が表示されます。Google広告の「広告プレビューと診断」や、ツールを使った方法は後半でご紹介しますので、まずは最も簡単なやり方で広告を確認してみましょう。
今回は下記の企業をサンプルとして用います。
広告運用の目的: 航空券を買いたいユーザーを自社サイトに誘導し、自社サイトから航空券を購入してもらう
ターゲット国: 日本
ターゲット言語: 日本語
ターゲットキーワード: 「航空券 購入」
例:エアトリ、トラベルコ、エクスペディア
航空券を比較・販売するサービスを提供しているサンプル事例の企業の場合、「航空券 予約」はリスティング広告の運用で最も重要なターゲットキーワードと考えられます。このキーワードで検索するユーザーは、いままさに航空券を予約しようとしていると考えられ、Webサイトに誘導した際に航空券を予約する見込みが高いことが予想されます。
「航空券 予約」というキーワードでどのようなリスティング広告が現在表示されるかを確認するには、Googleで「航空券 予約」で検索すれば、すぐに競合の広告文が表示されます。
▼Googleで「航空券 予約」で検索した際に表示される広告
画像出典:Google
検索結果に表示される広告を分析するだけで、下記の示唆が得られます。
・各社「格安」「最安値」「おトク」等の文言を広告文に入れ込み、安さをアピールしている
・「目的地までの航空券の値段を航空会社ごとに簡単に比較できるか」「そのサービスで予約するとどういうメリットがあるのか」「直前の予約でも問題ないか」「マイルは貯まるか」「LCCに対応しているか」等は広告文に入れる要素になる
ユーザーは複数のリスティング広告を見た後に、様々な広告文を瞬時に比較・検討し、魅力を感じた広告文をクリックします。そのため、競合の広告文の内容や自社の強みを把握した上で、ユーザーが最もクリックしたくなるような広告文を作成し、広告のクリック率・コンバージョン率を高めていくことが求められます。
このように競合の広告文を分析し自社の広告文に活用することは、リスティング広告のパフォーマンスを高める上で重要なプロセスです。
海外にリスティング広告を出稿する際は、慣れしたんだ日本と異なり、文化や言語が異なるため、現地でどのような広告文がユーザーの反応が良いかをまずは調査する必要があります。そのため、現地企業のリスティング広告の広告文の確認はより一層重要になります。
それでは、日本でいるときに英語のターゲットキーワードを検索した際にどのようなことが起きるかを次に見てみましょう。
日本で英語のターゲットキーワードを検索
サンプル事例として、先程用いた事例とほぼ同じですが、ターゲット国をアメリカに変え、ターゲット言語を英語に変えた事例を用います。
広告運用の目的: 航空券を買いたいユーザーを自社サイトに誘導し、自社サイトから航空券を購入してもらう
ターゲット国: アメリカ
ターゲット言語: 英語
ターゲットキーワード: 「book flight」
例:エアトリ、トラベルコ、エクスペディア
航空券を比較・販売するサービスを提供しているサンプル事例の企業の場合、英語の「book flight」というキーワードは、日本語の「航空券 予約」と同じぐらい見込みが高いため、ぜひとも広告を表示させたいキーワードの一つです。
しかし、日本で「book flight」と検索しても、英語での自然検索の結果が出てくるだけで、リスティング広告が全く表示されません。
▼Googleで「book flight」で検索した際の表示結果
画像出典:Google
これはアメリカで「book flgiht」というキーワードにどの企業も広告を出稿していないからではなく、検索した人が日本にいるため、現地の広告が表示されていないのです。
基本的に検索広告は国、地域、言語でターゲット設定を行うため、アメリカで航空券を販売する企業は、日本に対して英語でのリスティング広告の出稿はしていません。
そのため、日本から「アメリカの『book flight』というキーワードが検索された際に、現地で表示される広告文」を確認するためには別のアプローチを取る必要があります。
海外のリスティング広告を確認する方法
海外でターゲットとする国で、特定のキーワードで表示されるリスティング広告の広告文を確認するためには、下記の4つの方法があります。
・現地でGoogle検索でターゲットとするキーワードで検索
・Google広告の『広告プレビューと診断』機能を利用
・無料ツールを利用 (I Search From)
・有料ツールを利用 (SEMrush)
本記事では、それぞれの方法の概要と、メリット・デメリットをご紹介します。
現地でGoogle検索でターゲットとするキーワードで検索
この方法は、日本にいるから海外の広告が見れない、それなら日本ではなく海外に行って広告を確認しようというやり方です。例えば、私はシンガポール在住のため、英語で「book flight」と検索すると、シンガポールを対象にしたリスティング広告が表示されます。
このようにGoogle検索で表示される広告は検索が行われる場所によって変わります。ターゲット国に訪問し、Googleでターゲットキーワードを検索すれば、まさに調べたかった広告が表示されます。
・広告をクリックし、ランディングページ(広告のリンク先のWebページ)を確認できる
・思いついた限りでのキーワードを瞬時に試すことができる
・パソコン、モバイルといったデバイス毎のリスティング広告が表示できる
・ユーザーの言語など、検索の条件を細かく変えることができる
・既に海外の拠点で働いている場合、実行が簡単
・自然検索の結果も確認できる
このやり方は一見アナログに見えるかもしれませんが、最も自然な形で海外のリスティング広告を確認できるため、数多くのメリットがあります。また、海外にいるため、現地のディスプレイ広告やFacebookやTwitterなどのSNSでの広告も確認できます。
しかし、現地に行くという最も高い障壁があるため、日本にいる場合は、これから紹介するその他の方法と比べて、最も実行の難易度が高くなります。現地に行くことが難しい場合は、海外の友人や海外拠点の同僚に依頼することもできますが、検索してほしいキーワードや広告の記録方法など、細かい指示出しをする必要があり、必ずしも意図通りのデータが受け取れるかはわかりません。
TeamViewer等リモートで海外の友人・同僚のパソコンを操作して確認する方法もありますが、セキュリティや人間関係上、気軽に実行するのは難しい場合もあります。
そのため、この方法は「できればベスト」といったレベルに留め、次に紹介する方法で基本的には海外のリスティング広告を確認して頂くことになります。
Google広告の『広告プレビューと診断』機能を利用
2つ目の方法はGoogle広告の「広告プレビューと診断」機能を使うやり方です。
「広告プレビューと診断」はGoogle検索にリスティング広告を出稿するために利用するGoogle広告に標準の機能として備わっています。利用するためにはGoogle広告のアカウントを開設する必要はありますが、ツール自体は無料です。
「広告プレビューと診断」機能を使うと、指定したキーワードで表示される広告文を確認することができます。
「広告プレビューと診断」は、キーワードを指定できるだけでなく、地域、言語、デバイスも設定でき、日本だけでなく、地域を変えれば日本以外の国の広告も表示することができます。
また、Google広告の機能の1つのため、自分が出稿する設定を行ったキーワードにきちんと広告が表示されているかも確認することができます。何かしらの理由で表示されていない場合は、その理由も教えてくれます。
Googleが提供する公式ツールだけあり、広告文の表示にはまさに最適のツールですが、広告をクリックすることができないというデメリットがあります。
競合のリスティング広告を分析するうえで、どのようなランディングページを使っているかも重要です。しかし、「広告プレビューと診断」機能はあくまでも広告文にフォーカスしているため、ランディングページは対象外になります。
・思いついた限りでのキーワードを瞬時に試すことができる
・キーワードの指定だけでなく、地域、言語、デバイスの設定も可能
・Google広告に備わるツールのため、設定したリスティング広告が表示されているかどうかも確認できる
・Google広告にログインする手間が発生する
自社や他社のリスティング広告の広告文を確認する際は、「広告プレビューと診断」機能を使うのが最も一般的です。Google広告のアカウントを作成すれば利用できるため、海外の広告文を確認する際はまずはこの機能を利用しましょう。
無料ツールを利用 (I Search From)
I Search Fromは指定した国や言語で特定のキーワードの検索結果を表示できるツール(無料サイト)です。アメリカのマーケターの友人から教えてもらいました。日本ではほとんど知られていませんが、海外のGoogle検索結果を確認できる便利なツールです。
Google広告の「広告プレビューと診断」とは異なり、アカウントを作成する必要がなく、下記Webページにアクセスし、国、言語、デバイス、キーワードを設定するだけで、即座に検索結果が表示されます。
▼Country: United State, Language: English, Deview: Current(パソコン), Keyword: book flightを指定
画像出典:I Search From
上記の通りに入力し、「Search」ボタンを押すと、設定した条件でのGoogle検索の結果がすぐに表示されます。
I Search FromはGoogle広告の「広告プレビューと診断」とほぼ同じことができます。メリットは細かい条件を設定できることに加えて、Google広告と異なり、アカウントを作成/ログインする必要がないことです。デメリットはGoogle広告と同様、表示される広告はクリックできないため、ランディングページを見ることはできません。
・思いついた限りでのキーワードを瞬時に試すことができる
・キーワードの指定だけでなく、地域、言語、デバイスの設定も可能
・Google広告とは独立したツールのため、自社のリスティング広告とは連動していない
有料ツールを利用 (SEMrush)
最後に紹介する方法は有料のツールを使う方法です。SEOやリスティング広告に関する有料ツールの中には、Google検索結果にどのように表示されるかが非常に重要になるため、指定したキーワードの検索結果を表示してくれる機能を持っているものもあります。
例えば、SEMrushというツールは、SEO対策やオンライン広告の運用、競合分析に関して豊富な機能を持ち、指定したキーワードでのGoogle検索結果を表示できたり、指定したドメイン(Webサイト)が運用するリスティング広告を見ることができます。
SEMrush< 今回はサンプルとして、SEMrushのKeyword Difficultyツールを使って、「シンガポールでCRM※と検索された際のGoogleの検索結果」を見てみましょう。 ※Customer Relationship Managementの略で、顧客管理をするためのソフトウェアを指す
まずはKeyword Difficultyツールで国とキーワードを指定します。そして、「難易度を表示」というボタンを押すと、そのキーワードの詳細データが表示されます。
Keyword Difficultyツールは本来「指定したキーワードにおいて、Googleの自然検索で上位表示されることがどれぐらい難しいか」を調べるためのツールのため、「難易度を表示」というボタンになっています。
表の右にSERP※という列があり、その下のアイコンをクリックすることにより、広告プレビューに移動することができます。
※SERPとはSearch Engine Results Pagesの略で、ユーザーが検索エンジンで検索を行った際に表示される検索結果画面を指す
SEMrushを活用することの最大のメリットは、プレビューされる広告をクリックすると、ランディングページに移動できることができます。指定したキーワードの広告文だけでなく、クリック後に移動するWebサイトも確認することができます。これはGoogle広告の「広告プレビューと診断」にはない機能です。
デメリットはSEMrushはGoogleからSEMrushが収集したデータをもとに広告のプレビュー画面を表示しているため、SEMrushが収集していないキーワードの検索結果は表示することができません。
例えば、「日本で『Web制作』と検索された際のGoogleの検索結果」を表示しようとすると、下記のようにエラー画面が表示されます。
画像出典:SEMrush
そのため、検索ボリュームが多いビッグキーワードのリスティング広告は確認できる可能性が高いですが、マイナーなキーワードは確認できない場合が多いことは気をつける必要があります。
・キーワードの指定、国の設定が可能
・デバイスや言語の設定が変更できない
・全てのキーワードの広告が表示できるわけではない
また、SEMrushにはドメイン(WebサイトのURL)を指定すれば、その企業のリスティング広告の広告文を表示する「リスティング広告分析」機能が備わっています。競合など、特定の企業の広告文を見たい際は、ぜひ本機能も試してみてください。
▼Salesforce.comのシンガポールのリスティング広告の分析結果
画像出典:SEMrush
まとめ
本記事では、海外のリスティング広告の広告文を確認する方法として、「現地でGoogle検索でターゲットとするキーワードで検索」「Google広告の『広告プレビューと診断』を利用」「無料ツールを利用 (I Search From)」「有料ツールを利用 (SEMrush)」という4つをご紹介しました。
紹介したとおり、それぞれにメリットとデメリットがあるため、基本的にはGoogle広告が提供する「広告プレビューと診断」を利用し、もっと簡単に確認したい場合はI Search From、より深く分析するためには、現地を訪問/現地スタッフの協力や、SEMrushを活用することが効果的です。
海外向けマーケティング戦略の1つとして、リスティング広告を出稿する際は、ぜひ本記事でご紹介した方法を使って、どういう広告文を作ればパフォーマンスが高いかを調査したうえで、取り組んでみてください。